合気道は試合のない武術で、「お互いにこの投げではこうなる」という型がきまった稽古をする柔術(関節技・投げ技主体)です。
武道・格闘技界隈では、「この武術は実戦で使えるのか?」「試合で戦ったらどの武術が勝つのか?」といった議論が盛んに交わされ、合気道は否定的な目線で見られがちです(._.)
そこで、三度の飯より合気道を愛しており、実際に指導経験もある麻婆神父が、よくある議論について正直に語ってみようと思います。
麻婆神父の合気道経歴はこちら
合気道は実戦で使えるのか?
結論、合気道で習った技で、すぐに実戦に応用できる類のものは格闘技などと比べるとあまり多くないのが事実です。
⭐合気道の技はそのまますぐに現代の実戦に用いることは難しい
⭐参段四段くらいでようやく多くの人が合気道の身体の使い方が実戦に応用できるレベルで仕上がってくる
⭐合気道の技術のルーツはお侍の時代の組みうちを想定している
⭐護身術としては胸倉を掴まれたときなどに強い
合気道の技の多くは、本当の意味での合気道的な身体の使い方そのものをマスターしなければ応用が難しいですので、かなり長い期間稽古を積んでようやく実戦でも応用できることが多くなる程度です。
では、それって何段くらいの実力なのでしょうか?
⭐級レベル
ほぼいません。
上手い人は初段まで早い期間で駆け上がりますが、その短い期間で身体の使い方が仕上がるほど合気道は甘い世界ではありません。
⭐初段・弐段レベル
少数ですが、すでにできている人がいる印象です。
わたしも初段になってから、脱力が本当の意味で理解できたなと感じます。
ただ、これはかなり早い方かつ、他の人の何十倍も稽古量を積んだからこその結果なので簡単ではありません。
⭐参段・四段レベル
このあたりでようやく脱力や身体の使い方が理解できている人数が、できない人よりかなり上回るくらいになっている体感です。
参段四段になるには相当長い年月を合気道に捧げる必要がありますので、覚悟は必要です。
ただ、ここまで続ける人かつ四段に上がれるような方は、それこそ三度の飯より合気道を愛している方だと思いますので問題なさそうですね。
ここまでお話ししたように、合気道では、柔道やボクシングなど試合ありきの格闘技・武道と比べて、すぐに実戦で使える技は多くありません。
これは、そもそも合気道のルーツが帯刀している時代の戦いを想定したものであることも一因です。
手刀を頭に向かって打つ正面打ちとか、片腕をがっちり両手でつかまれる片手両手取りなどは現代ではあまり想定しない場面ですからね。
では、すぐ応用できそうな型はないのでしょうか?
筆者が思うすぐ応用できる型は、胸取りや、後ろ両手取りや後ろからの羽交い絞め、などでしょうか?
胸倉を掴まれた際に秒で封殺する関節技は多数あり、稽古で習った形をそのまま使えますので一定の護身効果はありそうです。
また、女性の場合、不審者から手を掴まれたり、後ろから抱き疲れたりといったときの対応も学ぶことができます。ただ、これは難易度高めです。
どちらも効かせないと意味がない技なので、普段の稽古では、約束稽古にかまけて妥協した技を練習し続けないように注意が必要です。
きちんと効いているのかも意識しながら日々の稽古に励む必要があります。
ただし、効いていないからといって耐え過ぎるのはただの嫌な人になってしまうのでやめましょう。
お互い同意のうえで行うか、一通り終わったあとにアドバイスするなど、先輩としての立ち居振る舞いもとても大事です。
合気道は格闘技の試合で勝てるのか?
では、段位をとるまで頑張ったら、異種格闘技戦で勝てるのか? 実際ほかの格闘技と比べてちゃんと強いのか? ということを気にされる方も多いのではないでしょうか?
なぜなら、合気道はそもそも試合を想定していないため、普段の稽古も決まった型を反復練習するのが通常です。
また、もしこういうことがあったら、という変則の稽古もあったりしますが、大体は綺麗事なので、フェイントや駆け引きなどの訓練はほぼ行いません。
そのため、合気道の道場で教えてもらう稽古を続けているうちは、試合に通ずるような実戦的なノウハウを得ることは難しいのでしょう。
では、他の格闘技にも手を広げて、浅く広く学ぶ方がよいのかというとそういうわけではありません。
合気道と格闘技では身体の運用法が全く異なるため、はじめのうちからいろいろやっていては、ちぐはぐになってしまいます。
合気道に打ち込むと決めたのであれば、合気道一本! そのくらいのつもりで徹底的にやってみて、そのあとに他を知る意味で様々な武道や格闘技との交流を深めていくのが正しい道ではないかと感じます。
合気道を習ったからといって、他流試合で相手を圧倒するのは難しいでしょう。格闘技の試合においては、格闘技の技術が一番活きる場なのですから。
合気道の技術や身体づくりは目先の試合や喧嘩に勝つために練るのではなく、もっと大局的な目線で活かすことを考えた方がよいでしょう。
合気道を学ぶ意義・得られること
現代の実戦に即応できる技術こそ少ないですが、合気道にはほかの武術にない魅力が多数あります。
組んずほぐれつの泥仕合があまり好きではない方、極端な例ですが、映像作品やアニメなどで相手が崩されたのに気付かないような美しい投げを見るのが好きな方は、合気道の(やらせではない方の)投げを実際に見ると本当に感動すると思います。
わたしが合気道に心を奪われたきっかけは、入会後初の稽古風景です。
一刻も早く稽古をしたかったわたしは前日の夜の見学から間もない、翌日の早朝稽古に足を運びました。
すると、平日の早朝なので一般の参加者がおらず、わたし以外は若手の指導員(内弟子)2名という壮絶な状況。
そんなことにも気づかずに厳かな空気感ではじまる稽古にわくわくしていたわたしを待ち受けていたのは超スパルタ稽古笑。
初回入門だから手取り足取り教えてもらえるのかと思いきや、3人中2名が交互に組んで、一人は待機するローテーションで、間断なく投げて投げられての繰り返しでした。
合気道って意外と崩しで走らされるんだなあなどと疲労困憊のなか思うわたし。
そんなとき、いよいよ指導員vs指導員のターンになって、とんでもない投げの応酬が目前に、、
人が宙に浮いているのです!
しかも、よくある達人風のお爺さんがふわっと投げるみたいな光景ではなく、ガチのラリアットみたいな入り身投げや、肘の関節が折れたんじゃないかというような壮絶な四方投げ。。
超体育会系、、、
とにかく圧倒されましたが、これがわたしの人生で最も大切な合気道の原風景。
その後、ひじがみしっといっていた四方投げで片方の指導員は負傷してました。恐ろしいね、、
そんなこんなでわたしはこんな風になりたい! と強く思い合気道に心酔。週9回以上(1日に2/3回行く)の稽古へとのめりこんだのでした。
合気道は、試合がない武道のため、試合や喧嘩に勝つための実戦的な技術を学ぶ場所としては不足があるかもしれません。
しかし、合気道の技には、他でもない合気道にしかない魅力があり、こんな風な崩しや投げができるようになりたい!! と心から思わせられるような魅力があります。
目先の勝ち負けではなく、しっかりとした合気道家としての身体作りを目指した先に、きっと誰もが憧れるような美しい技術があり、その過程においていつの間にか強くなっているものです。
ここまで聞いて面白そうだと思った方はぜひ合気会へ入門してくださいね。
ではまた(^^)/